始まり

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今度は下降しながら、橋に近づいていく。 近づくにつれて、胸の奥がきゅうと鳴くので、晴久は握り拳を作り、胸を押さえなければならなかった。 緊張しているのか、興奮しているのか、恐怖を覚えているのかはよくわからない。 晴久にはこの現象が先程の出来事から現実逃避しているようにも思えた。 しかし、心の奥底ではこのまま逃げたい、という思いが顔を覗かせ、瞬きをすれば母の死体が転がる部屋に忽ち戻ってしまうのではないか、という確信のない不安が晴久を苦しめた。
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