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「あぁ、やっぱり道に迷ったんだね。なに、恥じることはない。私の若かりし頃なんて四六時中迷子になっていたさ。ちょっとそこで待ってなさい」
そう言うと、おじさんは煉瓦の山を回って彰の前までやって来た。
全身が現れたおじさんは、紺色のシャツをスボンにピッチリとしまい、手には軍手のような物をつけている。
その服装にプラスして、タオルを肩にかけている姿は、もはや工事現場で作業をする人そのものだ。
「立ち話もなんだから、私の家で話そうか。すぐそこのボロ屋だよ。ほらっ、あそこに見え・・・」
今まで一方通行で喋り続けていたおじさんが、突如口をポカンと開けたまま止まってしまったので、彰は不安になった。
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