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階段で死んだ人がいる。
殺したのはあたし。いつもの調子であいつを虐めていた。なんで虐めていたのかは忘れてしまった。だけどここまで虐めが続いたのはただ単に楽しかったから。だけどあたしはあの日、少しやり過ぎてしまった。
あたしは階段の最上段にいたあいつを、軽い気持ちで「邪魔」と言いながら足を蹴ってしまった。突き落とすつもりなんてなかった。ただあいつがテンパる姿が見たかっただけ。なのにあいつは簡単にバランスを崩してしまった。そのままあいつは足を、腕を、首をすべておかしな方向に折り曲げて死んだ。あたしはそのとき何故か笑ってしまった。人があんなにあっけなく死ぬその脆さに笑ってしまった。だけど、その笑いはすぐに収まった。そして逃げた。せっかく入った名門校から追い出されたくなかった。その日の夜のニュースであいつの写真がでた。相変わらずキモかった。両親はあたしをいい子だと思ってるからあたしのことは心配してくれた。「大丈夫か」と。殺したのはあたしなのに。
次の日学校に行くとマスコミが沢山いた。あたしもテレビに写ってしまった。
教室に行くとあいつの席には花が生けてあった。あたしがいつもやっていた手だ。それが本当になってまた笑いそうになった。だけど今回は堪えた。
教室の空気が重かった。あたしはいつもいる友達グループにはいかず、自分の席についた。いつもこうすれば人が来る。
...来ない...来ない。いつもべったりのあいつが、化粧の濃いあいつが、香水がきついあいつが、何で何で何で。いつもうざいぐらいにやって来て、つまらない話をするくせに、何で来ない。
そしてあたしは気がついた。目の前には花。死んだあいつと同じ花。
あたしは気づけば花瓶を床に叩きつけていた。ガラスの割れる音。一瞬の間。そしてみんなはあたしを見.........ない。みんな割れた花瓶を見る。そして誰かが声を出す。
「何で勝手に花瓶が...」
勝手?何が?これはあたしが今落としたもの。何で誰もあたしを見ない。そして誰かが声をだす。
「碧、死んだって気づいてないんじゃない?」
シンデナイッテキヅイテナイ...。そしてあたしは思い出す。
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