『少女』

2/4
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 外は藍色。遠くからはお囃子の賑やかな音が鳴り響いていたのを覚えている。  今日は、お祭り。  お婆ちゃんが買ってくれた新しい浴衣を来て、お友達の多恵ちゃんと近くの神社に行く予定だった。  ―――…だった、んだ。本当は。  今の私はと言うと、大きな朝顔模様の入った白い浴衣ではなくて、黒い着物を着せられている。  目の前には、お爺ちゃん。  真っ白な着物を着て、真っ白な顔でピクリとも動かない。  そのお爺ちゃんの傍で、昨日からずっと寝ていないお婆ちゃんと、お仕事をお休みしたお父さんとお母さんが肩を震わせて泣いている。  お祭りの二日前、お爺ちゃんは天国へと旅立った。…そう、お婆ちゃんから聞いた。天国に行くのに、どうして動かなくなるのか尋ねたら、体が重いと空の上にある神様のいる場所まで辿り着かないんだって教えてくれた。  …正直、私にはそれが何だか分からなかった。  結局私が理解したのは、人は天国に行く時には動かなくなる事と、誰かが天国に行くと見た事もない親戚が沢山来て、お婆ちゃんやお父さんお母さんと喧嘩をしていく事だった。  はっきり言って、その場に居ても問題無かったし、大人の会話には付
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!