――二年前(まひる側)

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なんで登場人物の心情なんてわかんなきゃいけないんだといつも思っている。 「あーどうしよう」 私が小さくつぶやくと隆がどうした?と聞いてきた。私は、 「英語のワーク忘れた。取り行くのめんどくさい。理科はやりたくない。国語嫌い。社会は簡単すぎて覚えた。することなーい」 そういって机に突っ伏すとスッと目の前に英語のワークを差し出してきた。見ると隆のらしい。 「え、いいの?」 「いいよ。答えこきこまなければ」 「ありがとう!」 私はそう言って英語をやってその日は終わった。それから毎日のように勉強をするようになったがそれ以外は接点のない2人。ある日、給食の準備をしていると近くに隆がやってきた。こっちに気がついていないらしい。そのとき私はさりげなく会話を聞いてしまった。 「テスト勉強してんのかよ」 「してるよ」 「マジで。おれなんもしてねぇ」 「高校行けんのかよ」 「大丈夫オレ、天才だし」 「どこかだよっ」 他愛のない話だ。 「そういえば、隆は平行得意だったよな」 「ん?あぁ得意だよ。塾でやってるし、授業でもやってるし」 え?苦手じゃないの?矛盾した会話が聞えて私は一瞬思考が止まった。 「おれ苦手なんだよなぁ。あれの何処が簡単」 「簡単だろ。証明の方がめんどくさいって」 「証明ねぇ。あれも意味不だねー。理解不能」 「はいはい」 私はそこまで聞いて教室へ入って行った。 その日の放課後、いつもと同じように2人で勉強をしていると隆が平行四辺形の単元の質問をしてきた。 「あのさ、ここ・・・」 「得意なんじゃないの?」 図星だったのか、一気に驚いた表情になった。
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