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夜。
巨大な廃墟の、中庭。
周囲をぐるりと囲む、半ば崩れかかった石壁。そこに飛び散ってこびりついた、夥しい量の赤い血の跡。
地面には、大小無数の骸。
人間のものもあれば、全身を長い毛に覆われた獣人や、両腕の代わりに大蛇を生やした巨人…人外異形のものもある。
空は漆黒の帳に完全に覆われ、星の瞬きすら地面には届かない。
凄惨な光景を浮かび上がらせるのは、中庭の中央で暗闇に抗うように燃える、小さな焚き火。
炎は夜の風に揺らめきながら、周囲を囲む五人の男女の顔を赤く照らした。
パチ…
パチ。
静寂の中、薪の爆ぜる音が、時折響く。
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