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「まったく……義姉さんは何を言ってるんだか」
家から出ても真っ赤な綾乃さん。手を繋ぎながら歩いているが、ちょっと俺よりに近づいている。
「翔……今日の夕飯何がいい?好きなの作ってあげる」
「俺は綾乃さんが作った料理が好きですよ」
「……ありがと。でも何かあるでしょ?」
「ん……まぁ帰りまでには考えておきます」
「わかったわ……」
『…………』
しばし沈黙が場を支配する。少し話題に困る。付き合い始めて約四ヶ月、たまにこんな状況がある。そのたびに『翔、ここで気の利いた話題を言いなさいよ』と無言でプレッシャーを綾乃さんから受ける。
「綾乃さん、荷物持ちますよ」
「今日は始業式だから何も入ってないわよ」
「えっと……宿題やりました?」
「春休みは宿題なかったでしょ」
再び会話に困る。綾乃さんに視線をやると目が合うと逸らされる。
「そういえば綾乃さん、綾乃さんのお母さんに電話とかしました?」
「…………まだ。なんて連絡すればいいのかわからなくて」
以前連絡先を貰ったのだが、綾乃さんはここ四ヶ月連絡をしていないみたいだ。親としたら心配だろう、それに綾乃さんの写真を丁寧にアルバムしているくらいだ。我が子を愛しているに違いない。
「今日電話しましょう。最近の近況報告くらいでも喜びますし」
「……考えておくわ」
電車に乗って学校に向かう。おそらく学校中に俺らが付き合っているのは新入生を除いて沢山いるだろう。三学期、登校初日に綾乃さんが教室でキスしてきたからだ。……あの時の暴動は凄かったな。
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