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「かける…、カケルじゃな」
何度か復唱し、一人で納得する。
僕への配慮か、女の子は終始、ほとんど口を開かなかった。
やがて、体中のあちこちの包帯が全て取り替えられる。
女の子は一息ついて立ち上がった。
「では、わしは自分の部屋に戻るとしようかの。カケル、大人しくしておるのじゃぞ」
「えと…、あり…がとう?」
何とかそう返す。
女の子は満足そうに頷いてから、僕に背を向ける。
「ああ、わしはすぐ隣の部屋におる。何かあったら呼ぶのじゃぞ」
思い出したように付け加え、戸を開いて部屋を出た。
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