プロローグ

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「もう少しだけ我慢してね」 母さんが後部座席の僕を振り返り、すまなそうに言う。 そんな事言って、山道に入ってから既に二時間が経過しているじゃないか。 揺れのせいで眠る事も出来ない。 結局、することは手元の金属の板を眺める事しかなかった。 中央に刻まれた卍型と、その周りに奇妙な装飾が施されたその板は、父さんと母さんの研究に必要なものらしい。 「それはな、村の悪霊を鎮めるっていう、古い言い伝えの中に出てくる呪札の文字を記した物なんだ。年代物なんだぞ」 ミラー越しに僕を見ながら、父さんが説明する。 「じゅふ?」 聞き慣れない言葉の響きに首を傾げる。 「ははは、翔にはまだ難しかったかな。魔法の言葉みたいなものだな。父さんと母さんは翔が生まれるうんと昔から、その板の研究をしていたんだぞ」 「ふうん」 良くわからなかったが、すごいと言うことは理解した。
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