8人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「もう少しだけ我慢してね」
母さんが後部座席の僕を振り返り、すまなそうに言う。
そんな事言って、山道に入ってから既に二時間が経過しているじゃないか。
揺れのせいで眠る事も出来ない。
結局、することは手元の金属の板を眺める事しかなかった。
中央に刻まれた卍型と、その周りに奇妙な装飾が施されたその板は、父さんと母さんの研究に必要なものらしい。
「それはな、村の悪霊を鎮めるっていう、古い言い伝えの中に出てくる呪札の文字を記した物なんだ。年代物なんだぞ」
ミラー越しに僕を見ながら、父さんが説明する。
「じゅふ?」
聞き慣れない言葉の響きに首を傾げる。
「ははは、翔にはまだ難しかったかな。魔法の言葉みたいなものだな。父さんと母さんは翔が生まれるうんと昔から、その板の研究をしていたんだぞ」
「ふうん」
良くわからなかったが、すごいと言うことは理解した。
最初のコメントを投稿しよう!