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「…お、見えてきたぞ、あそこだ」
窓を開けて崖下を見る。
川上の方に民家が伺えた。
「木造だあ…」
「うふふ、灯火村にはコンクリートなんて無いのよ」
「うそ、昔の人みたい…」
やっと村にたどり着いた、その時だった。
「え? うおお!」
父さんの悲鳴と同時に、車が激しく横滑りする。
「きゃああああ!」
ハンドルを取られた車はカーブを曲がりきれずに…。
木製のガードレールを突き破り、道から飛び出した。
「ああああああ!」
何が起こったのかさえ理解出来なかった。
僕達を乗せた車は、数百メートル下の河原へと真っ逆様に転落していった。
激しい浮遊感と恐怖の中、僕を庇おうと伸ばされた母さんの腕が見える。
手元の金属板を抱きしめる。
そして、車は岩に叩きつけられた。
僕の体は石の上に投げ出される。
かろうじて意識はあった。
どこからか、鈴の音が聞こえる。
薄れゆく視界に、少女の姿が映り…。
そこで僕の意識は途絶えた――。
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