アッシーが行く

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  天使の微笑み……そうこの男が思えたのは、この一瞬だけだろう。   「それじゃあ早速……」   うふふ……と嬉しそうに小さく笑い声を上げ、軽やかな足取りでドラムに向かうアッシー。 ドラムの前に立つと、クルクルと器用にスティックを指先で回しニッと不敵に笑った。   「叩き方教えてあげようか?」   「ううん、いらない。あたし、ただ叩きたいだけだから」   「え?」   デレッとした顔でアッシーに言ったその男の顔色が、みるみるうちに変わっていった。   「せーの!」   元気良くそう言うと、アッシーはスティックを力任せに振り下ろした。   「ちょっ……」   男の制止も聞かず振り下ろしたスティックは、ドゴン!と言うけたたましい音と共にドラムに穴を開けた。   「おい!何するんだよ!」   デレデレした顔が一気に怒りで紅潮する。   「叩きたいって言ったじゃない」
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