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自分に対するそんな周りの視線など気にする風もないアッシー。
ひとしきり嬉しそうに笑い声を上げたかと思うと、どこからともなくさっと何かを取り出し口元に持って行った。
その物の正体はおもちゃのマイク。
いったいどこに隠し持っていたのだろうか、アッシーの手にはしっかりとおもちゃのマイクがアナウンサーよろしく握られているのだ。
「さー、やって参りました!私はただ今あるライブハウスの前にやってきております」
誰が聞いているわけでも、どこかでカメラを回しているわけでもないのにアッシーは一人アナウンスし始める。
「皆様、この目に前にあるライブハウスの中に私のお目当ての物があるのです。早速行ってみましょう」
皆様とはいったい誰に向けて言っているのか、皆目見当がつかないがまるで目の前にカメラがあり、ブラウン管越しに視聴者が居るかのように身振り手振りまでご丁寧にしていた。
「皆様聞こえますか?だんだんと大きくなるこの音。私の鼓動も一緒に大きくなってしまいます」
おもちゃのマイク片手に実況中継をしながら階段を下りていくアッシー。
ドアの前まで行くと、ノブに手をかけマイクを又口元に持っていく。
ノブに手をかけたままクルリと振り返った。
まるで目の前にカメラがあるかのように……
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