アッシーが行く

9/12
前へ
/12ページ
次へ
ホワホワと今にも宙に浮いてしまいそうな表情で、心あらずと言ったようにも見える。   「これで叩くの?」   乗せていた手を、スッとスティックの方へと移動させるアッシー。 その行動でハッと我に返ったのだろう、男性はスティックに視線を移し小さく頷いた。   「ねぇ……」   「は、はい?」   上ずった声でアッシーに返事を返す男性。 とうのアッシーは男性の表情になど目もくれず、握られているスティックと視界に入るドラムにしか興味はない。   「あたし、ドラムが叩きたいの。叩いてもいい?」   ドラムに飛ばしていた視線を男性に戻すと、男性の顔がますますカァッと赤くなる。   「どどどどど、どうぞ」   もはや言葉にすらなってない返事だ。   「ありがとう」   差し出されたスティックを手にして、嬉しそうにアッシーは微笑んだ。 おそらく、男の瞳にはアッシーの微笑みが天使の微笑みに見えたのだろう。 うっとりと、トロントとろけそうな瞳でアッシーを見つめていた。  
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加