第1章 岐路

2/2
前へ
/37ページ
次へ
今まで『人生の岐路』は幾つかあった。 しかし、選択次第でこれ程人生が大きく変わるものなのかと思い知った、そんな体験をしたのは私が二十歳の誕生日を迎える2ヶ月前の事であった…… 短大在学中に講師から4年生への編入を薦められていたが、既に親の知り合いから就職先を紹介されていた。 当時は、バブルも弾け就職氷河期が始まった事もあり、早く親から離れて自立したいという、焦るような気持ちがあった。 しかも、紹介された職場はその時代ではかなり好条件だった為、進学したい気持ちも多少あったが私は就職の道を選んだ。 今思うと…… ここでの選択が、私の人生を変える大きな意味を持つ第一歩の選択だった… 進学を選ぶか 就職を選ぶか 誰もが通る選択の帰路。 その時、その瞬間はこの選択でこんなに人生を左右されるなんて、考えもしない。 自分で選んだ道とは言え「あの時もう一方を選んだいたら!」との後悔は今も、少しある… だが、当時の私は就職の道を選んでから、不思議な程充実した日々が続いた。 趣味で幼い頃から続けていた武道は、初めて全国大会の県代表選手に選ばれベスト16まで残り、長年の成果がやっと実を結び始め喜びと充実感でいっぱいだった。 短大卒業前には勤める為にと、車の免許を取った。 卒論も単位も落とす事なく無事に卒業し、自宅から片道1時間程の場所にあるとある会社の総務課に配属された。 仕事と趣味との両立が恐い位出来ていた。 生きることに不器用な私が、器用に充実した日々を送っていた。 当時の私は、毎日浮かれていたのかもしれない。 いや、 浮かれていたのだ。 思う事が叶い自分でしたいことが出来る喜びの影には、周りの援助があって周りの人達に助けられている。 その事に気付かず、感謝の気持ちも持たず、ただただ、背伸びだけして一人で大人になった気でいた。 それは、自分だけが気付いてなくて、周りから見ればとても危なかしく思った事だったに違いない。 周りの心配にも耳を傾けず、私は一人暴走していた。 そして遂に そのしっぺ返しとも言える、あの出来事が起きた
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加