水晶の魔女

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「ムーンフィッシュは尾ひれに触られることを嫌う。跨がった両足で挟みながら腹の部分を抱き抱えるようにして乗るんだ」 ムーンフィッシュのヒレは刺々しており、触れれば手が切れそうですが、それに反して体の表面は滑らかでふわふわしていました。 「こうですか?」 「そうだ。それと私に敬語は必要ない。マリアのほうが年上だろう」 「はぁ……」 そう言われてもここまで実力に差があると嫌でも卑屈になってしまいます。 私など手の届かない存在、天才レイブンを前にしては自分が霞んで見えます。 「では出発する!」 ぐっとムーンフィッシュが体を持ち上げたので、私は思わず態勢を崩しそうになりました。 体がどんどん上昇する感覚に足がすくみます。 まさか魚に乗って空を飛ぶことになるとは思ってもみませんでした。 「うわ!」 「最初は怖いがすぐに慣れるさ」 そういうレイブンは両腕を組んで足だけでムーンフィッシュに跨がっています。 風でレイブンの青い髪が揺れると、海から吹く潮風の香りがしたような気がしました。
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