水晶の魔女

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「では決まりだ。準備をして校門まで来てくれ」 レイブンはさっと踵を返して奥へ消えていきました。 佇まいといい実力といい並外れたものはありますが、私はレイブンという魔女をよく知りませんでした。 法師としても優しく、的確な指導をするレイブンですが何処か掴めません。 常に何かを背負っているような、近付きがたい距離感を覚えてしまうのです。 キングダムには柱の間と呼ばれる大理石に囲まれた正方形の部屋があります。 ここは法師たちの貴重品を保管するためのスペースで、その仕組みは一風変わっています。 「マリアです」 石には記憶があります。石から像を掘り出す彫刻家や、文字を刻んで後世へ語り継ぐ石碑などがそれを表しています。 魔法により人間の声を記憶した石たちはその者の声に応え、無限にある形の中から一つを導き出してくれます。 「マリア様、こちらがあなたの所有物となります」
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