水晶の魔女

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大理石から発せられる声は透き通った海の中に流れる鯨の歌のように心を癒してくれます。 自然の産物にしか醸し出せないメロディー、私はこの声が聞きたいがために用もなくこの場所に来ることもあります。 「いつもありがとうね」 私は愛用の樫の杖と外行き用の黒いローブを手に取りました。 このローブには魔除けの呪いが掛かっており、虫除けの効果もある優れ物です。 「有り難う。もういいわ」 私の声に呼応して大理石は音もなくスムーズに動き始め、私の持ち物を取り込んで元の平面な壁へと戻っていきました。 「またのお越しをお待ちしております、マリア様」 「うん、またね」 大理石の倉庫に保管されていたローブを羽織ると、裏地がひんやりとしていました。
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