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空を見上げれば日が傾き、わずかに東の空が暗くなっていた。
アキトは辺りを見回すと、ひとまず全焼したという弥彦神社に向かって走り出す。
弥彦神社は新谷の家からニキロもかからない距離にあり、徒歩でも十分に行ける距離だ。
あそこになら、あの少女の手がかりがあるかもしれない。
アキトはニュースを見てから、弥彦神社が倒壊、炎上したのは自分があの少女に場所を教えたせいではないかと感じていた。
もちろん、あの少女が関わっているかどうかはまだわからない。
でも、もしそうなら――
アキトが神社を目指して住宅街を走っていると、視界の隅を黒い影が横切った。
はためくマントに漆黒の髪、燃えるような瞳を見て、アキトはあっ、と声をあげる。
昨日出会った少女だ。
アキトは慌ててその後を追った。
だがアキトはえっ、と唖然とした表情で声を漏らした。
アキトの目の前で少女は縦横無尽に塀を飛び越え、民家を横切る。
常に先回りするよう走っていたアキトだが、ついに見失ってしまった。
猫みたいな奴だ。
アキトはそう思うと、息を切らしながら、辺りに視線を走らせる。
あの少女はどこに消えた?
アキトは少女がまた古い建物を探してると検討をつけ、必死に記憶から古い建物を導き出そうとする。
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