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「ねぇ、道を教えてくれるのかどうなのか、ハッキリしてもらえる?」
アキトは少女の声に我に帰ると、苛立たし気な表情を浮かべる少女をこれ以上刺激しないようすぐに答えた。
「別に構わないよ」
アキトは少し間をおいてから続ける。
「……それで、どこに行きたいの?」
「そうね、なるべく古くからある場所がいいわ。何十年、できれば百年以上あるような」
少女は早口に答えると、アキトの返答を待った。
道を教えて欲しいと言うからには、少女の行き先は決まっているとばかりアキトは思っていた。
そのためにアキトは一瞬動揺したが、すぐに考え始める。
アキトはう~んと唸ると、東の方向を指差した。
「この辺で知ってるのは、あっちにある弥彦神社くらいかな」
「ありがとう」
少女は無表情に呟くと、アキトに背を向けて駆け出した。
「あっ、ちょっと……」
アキトが声をかけたが、その少女は振り向くこともなく次の角を曲がって消えてしまった。
なんだったんだろう……
アキトは不思議な少女が消えた先をしばらく見つめていたが、また歩き出した。
その日の昼下がり、部活を終えたアキトと同じ剣道部の友人、新谷はコンビニに立ち寄っていた。
新谷はアキトより背が高く、中学生ながらに髪が若干茶色い。
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