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新谷は制服を着崩し、ネクタイを取った襟元がはだけている。
二人は雑誌コーナーで立ち読みをしていた。
「アキト、これ凄いぜ」
そう言って新谷がアキトの視界を覆うようにエロ本を広げた。
「残念、俺そういうのに興味ないんだ」
アキトは苦笑いを浮かべながらも、新谷の手からそれを奪って棚に戻すと、少年マンガを手に取った。
「子どもはこれでも読んどけ」
アキトは笑いながらそれを新谷に手渡す。
新谷はアキトの顔と手渡されたマンガを交互に見ると、呆れたようにやれやれと首を左右に振った。
「これだからどこぞのお坊ちゃんは……」
二人は顔を揃えると、シシシッと笑った。
二人はコンビニを出ると、そこで買った炭酸飲料で喉の渇きを癒した。
「やっぱ暑いときはこれだよな」
新谷がそう言うと、アキトもその通りだとうなずいて、また炭酸飲料を口に含んだ。
「そういや、今日の晩飯は?」
二人で歩いていると、新谷が思い出したようにアキトに尋ねた。
「またなの…?」
それにアキトは溜め息をつく。
新谷は自分の母親があまりに料理が下手なため、新谷は大抵アキトの家で夕飯を済ますのだ。
アキトはめんどくさそうに新谷に視線を向けた。
アキトの家は父子家庭で、さらにその父親も仕事で家にはほとんど居ないため、家事全般をアキト一人でやっている。
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