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少女はガタガタと揺れる神社の戸口に向けて、炎を纏った右手を一閃した。
激しい爆発音と共に紅蓮の炎が辺りを彩り、少女は燃え盛る炎の赤よりも紅い瞳でその光景を見つめる。
神社の屋根は消し飛び、燃え盛る炎は火の粉を舞い散らせながら周囲の木々をも包んだ。
紅い眼の少女は口元に微笑を湛えながら、炎に包まれた神社に向かって歩き出す。
少女は炎に飲まれていく神木の脇を過ぎ、炎の中を何事もないかのように進んでいった。
そして、少女は神社の中に横たわる亡骸を見つけると、それを踏みつける。
地に伏したそれが光の文字の羅列となって消えていく様を、冷たく光る紅い眼が見下ろしていた――
その翌日。
学校を終えたアキトと新谷は、新谷の家に向かって歩いていた。
定期テストの一週間前なので、今日から部活動もなく、帰路につく新谷の足取りは軽やかだ。
空を見上げれば雲一つない快晴で、昨日の夕方から降りだした豪雨が嘘のように感じられる。
二人は他愛もない会話をしながら、新谷の家であるアパートの一角にたどり着いた。
新谷はレシートなどの紙ゴミの詰まったブレザーのポケットから鍵を取り出すと、それでドアを開けてアキトを家に招く。
「お邪魔しま~す」
アキトが声をかけて家に入ると、新谷は靴を脱ぎ散らかしたまま居間に向かった。
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