クレセント レーヴァテイン

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アキトは自分の靴をきっちり並べると、新谷の後を追って居間に入った。 鞄を下ろすと、足を投げ出して座っている新谷の隣にアキトも座る。 新谷によると、母親は今は仕事で留守らしい。 新谷は一息つくとリモコンを手に取り、テレビの電源を入れた。 たまたまついたチャンネルでは通販がやっていて、藤色のスーツを着たオバサンがニコニコしながら商品の説明をしている。 化粧品の説明に始まり、これといって代わり映えず、延々と並べられるありきたりな謳い文句に嫌気がさし、新谷はチャンネルを変えた。 ちょうど夕方のニュースが始まるところで、タイトルと一緒に単調なメロディが流れる。 ニュースの内容はいつもと変わらず、内閣の批判や犯罪などを取り上げたものばかりだ。 〈……次のニュースです。昨夜未明――〉 しばらくニュースを見ていると、最初は聞き流していたアキトの表情が変わった。 〈……区の弥彦神社が倒壊、全焼した模様です……〉 弥彦神社って…… アキトはニュースキャスターの言葉に、無言で耳を傾ける。 〈……付近の住民の話では、激しい爆発音を聞いたとの証言も多々あり、県警は……〉 「近頃古い建物とか場所がよく壊れたり、火事になったりするよな」 新谷がテレビ画面を見つめながら言った。
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