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『今日も遅いな…」
かかって来ない帰るコールを待ちながらボンヤリ考えていた。
規則的に聞こえる子供達の寝息。
暗闇の中でふと、彼が最後に私に触れたのはいつだっただろうと思った。
母になる前、私は自分の容姿に自信があった。
好きになった男の子は必ず振り向かせる自信があった。
現に5歳年下の主人にも自分から思いを告げ、出会いから僅か5ヶ月でウェディングベルを鳴らした。
そして、結婚から5年。待ち望んだプリンセスを私は腕に抱いた。
翌年、我が家にはプリンスが誕生した。
腕に抱かれ、一生懸命おっぱいを飲む我が子は何て愛しいんだろう。
お腹に無数に残る妊娠線もこの愛しさの前では霞んで見えなくなる…
そして、この神聖な胸に触れようとする主人をほんの少し遠ざけるようになった。
愛している、だけど家事、育児、そして仕事。
幸せを感じながらも疲れていた。お願い、今は女としての私を求めないで…
それが素直な感情だった。
だけど
気付けば背伸びをしなくても40歳に手が届く。
情けなくなった乳房。
必要以上に丸みを帯びて来た体。
最近、白髪を1本見付けた。
このまま平凡な幸せの中で何のドキドキも感じることなく一生が終わるのかな?
主人には安心はあるけどときめきはない、誰かにもう一度だけ女として扱われたい…
もう一度だけ恋の始まりのドキドキを感じたい…
携帯の番号もアドレスも教える気は更々無い。
リアルな出会いも求めていない。
ただ、ほんの少しときめいてみたい…
それが出会い系サイトに登録したきっかけだった。
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