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何もかもが古いこの家だけど、水周りだけはほぼ新品だ。
(か~ッ! 二十四時間風呂♪ 最高だよなあ、おい?)
ぬるめのお湯にどっぷりつかり、俺は天井を見上げた。
年寄りだけで暮らしていたこの家は、パソコンとかの機械とは全く無縁の世界だ。
特別用もないのにネットを見るのが習慣になってただけに、何となく落ち着かない。
(携帯も役に立たねえし……こっちに知り合いなんて)
勢いよく湯船から体を起こすと、額からタオルがずり落ちた。
視界をふさがれた俺の脳裏に、あの猫のことが浮かんだ。
(そういや、アイツどうすっかな。ここはともかく家じゃ飼えねえし)
その時だった。風呂場のサッシの向こうで、にわかに三毛が騒ぎ出した。
「にゃあ! にゃー!にー!」
(三毛猫っておとなしいんじゃなかったか? なんであんな)
俺は風呂を飛び出した。
さすがにトランクスは忘れなかったけど、その間も猫はけたたましい位に鳴き続けている。
慌てていた俺は気付かなかった。
――昼間だというのに窓の外が、急激に暗くなり始めていたことに。
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