14人が本棚に入れています
本棚に追加
気の抜けた拍手をしたのに、ヤツはかなり満足そうだ。
当然のように両手を腰にやり、メロンソーダみたいな目で俺を見つめると、ようやく話を始めた。
「私の名はアル・カルス・アル・タイルという。タイラーと呼んでくれたまえ」
「で? 地球の人にはぜんっぜん見えねーアンタが、宇宙の彼方から俺に何の用事だよ?」
イかれてる奴に、合わせてやったつもりでペラペラ喋る俺の横で、タイラーの両手がふるえ始めた。
(まさか、仮面被ってるやつのお決まり表現その一。驚きじゃねーだろうな?)
「君は……なぜ説明もしないのに私の出自を流暢に語れるんだ? これも定めという鎖に組み込まれた運命なのかッ?」
「いや、俺、適当にガキの頃見てた特撮でありがちな…」
後ろを向いてぶつぶつ呟くタイラーの背中は、筋肉の繊維みたいに見える(参考:保健体育の教科書)赤や青のコードが、隙間をびっしりと埋め尽くしていた。
奴が身動きするたびに、小さな光が血の流れのように螺旋を描いては消え、また現れる。
(まじで宇宙人かよ? イかれたコスプレだって誰か言ってくれ!)
俺の心の叫びに答えは返らなかった。返ってきたのは、ありえない厄介事のプレゼントだ。
「集真君。君は今日から、銀河戦士・アプフェヴァインとなって戦うのだ! 幼い頃短冊に願った尊き誓いの元にッ!」
最初のコメントを投稿しよう!