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廊下を漂う味噌汁の匂い。
(いや。今は飯より猫)
小気味よく響く何かを刻むリズム。
(だから。味噌汁は赤味噌が好きだっつの)
とどめは焼き魚の煙だ。俺の育ち盛りの腹は時に正直すぎて手に余る。
たどり着いた茶の間には、案の定曹達がと、思いきや。
なんと奴は台所に立っていた! 足元では例の三毛猫が、にゃ~とやりながら牛乳をペロペロやっている。
「起きたのか、シュウ」
「お、おう」
二、三年前の奴なら考えられない光景に俺が固まっていると、後ろから珈南が肘で俺をつついて座らせた。
「あとちょいで出来っから」
「はい、卵焼き。好物だったよね」
一体、日向姉弟に何があったんだろう?
かなが目の前に置いた卵焼きを見る限り、朝から至れり尽くせりだ。
からし漬けのキュウリの並ぶ、列にも乱れがない。
(んなことより猫!)
俺は猫を見やった。餌をもらったせいか、こっちを見向きもしない。曹達の足にじゃれついてゴロゴロ喉を鳴らしている。
(面白くねえ~)
助けてやったのは俺なのにと俺は内心腹が立った。
けれども旨い朝飯を食べるうちに、そんなことは鮭の骨と一緒に捨ててしまっていた。
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