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朝からきちんと食べたのは久しぶりだった。
食後の麦茶をくいっとやって、俺はそれぞれ脇にいる従姉弟たちを見回す。
「ごちそーさん。つーか俺の親とおばさん達は?」
「シュウ、お前…置いてかれたんだぞ?」
「……はッ?」
またソータの悪い冗談が始まったと、俺は端から疑ってかかった。
けど俺の“下からしゃくりあげ目線”にも全く動じず、奴は新聞から顔も上げない。
「おばさん達、昨日急に海外出張決まって。ほら、ヨーロッパって奥さんが同伴だと商談が」
「んなこた分かってるよ! なんで息子の俺に一言も言わねんだよッ!」
かなの説明を遮って、俺はちゃぶ台を叩いた。単なる八つあたりだった。
「仕方ないだろ? 今回の法事も、出られたのは奇跡みたいなものなんだろうし」
落ち着き払った声のままでソータは言う。
俺の親父と日向兄弟の親父は社長と専務の間柄だ。自動的に二人の両親も不在、ということになる。
「夏休みの間には戻るって話だから。で、ついでにあたしは運転免許取得」
「おれはシュウの家庭教師」
気のせいじゃなく頭がくらくらしてきた。
確かに俺は陸上部で、しかも棒高跳び専攻だから必ずしも部にいなきゃ練習出来ないわけじゃない。けど…。
俺は黙って立ちあがり部屋に戻った。
文句を言おうにも、この田舎は携帯だけじゃなく圏外だと思わずにはいられなかった。
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