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ざりっ。ざらざら。ざりざりざりッ!
「うおおッ! つーか痛え!」
いつの間にか、寝入ってしまったらしい。
額を紙やすりでこすられたような激痛が走って、俺は跳ね起きた!
「みゃっ!」
とび跳ねたのは、猫もだった。足元から黒っぽい目が俺を見上げてくる。
「んだよお前。ソータ派になったんじゃなかったのか?」
「みゃ~ん」
抱き上げてやると昨日よりもさらにふかふかな毛並みになっていた。どうやらシャンプーされたらしい。
「お前ばっかスッキリしてずるいな。おっし! 俺もひとっ風呂浴びるか!」
猫を降ろして部屋を出ると、懸命に短い足でついてくる。
(まるで歩くぬいぐるみだな)
茶の間を横切ると二人はいなかった。ちゃぶ台の上にメモが乗せてある。
“集真へ
あたしは自動車学校。
曹達は町営プールとかに行ってきます。
お昼は冷蔵庫にあるから適当にどうぞ。
三時くらいには戻れると思う。
追伸。
子猫には一度温めて冷ましたミルクね。
“珈南”
(へいへい。さすがハタチ)
メモに頷いた俺は、とにかく気分を変えようと風呂場に足を向けたのだった。
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