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少年がこの感覚を味わうのはかなり久々の事だ。
まだ少年がヒーローとして活躍してきた時に嫌という程味わってきた。
「戦争開始以来だから鈍ってんじゃねぇか? ん?」
えみるは持っていたかわいい感じの傘を俺に向けながら言う。
「どうやら過去を知ってるんだな」
少年は警戒するように目を光らせながら尋ねる。
「知らないとこねぇよこんな世界」
えみるはあたり前のように返答する。
「まあ確証は無かったけど……なっ!」
なっ!の部分でえみるの体から今までの暗闇とは逆のまばゆい光が辺り一面に広がる。
だが、その光は全て少年の右手に集まって行き、やがて光は輝きを無くした。
「無駄だ。重力は光さえも吸収する」
俺がそう言うとえみるは本当に楽しそうに笑う。
「じゃあえみるは~。物理的な物でもつかおうかな」
今までのまがまがしい気配は消えて、まるで小さい子供のように笑っているが、手からは黒光りする拳銃を取り出す。
「ばーん」
えみるはニコニコ笑いながら引き金を引いた。
パンパンパンパンパンッ
乾いた発砲音が何度も聞こえる。
しかしそれは俺に当たる前に全てぐしゃりと潰れ、地面に落ちていった。
「身動きしねぇで能力を使い続けても全く疲れた様子がねぇな」
本来能力を使う事はかなりの集中力を使う。得に身動きを取らずに能力を使い続ける事にはかなり疲れる。
「流石人工レア能力プロトタイプってとこか」
えみるは少年を見ながらニヤリと笑った。
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