さよならの空

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さざ波が僕たちの足を濡らしては引いていく。 ザァー、ザァー。 波の音だけが絶え間無く続いている。 それはまるで、永遠に続くかのように思われ、また、この先で僕を待ち受けているものにすら錯覚させられる。 ただ単調に波の動きだけが時間の経過を知らせた。 この景色で動いているのは波だけ。 寄せる波と引き返していく波が衝突し、反り返って、元の形に戻る。 波の独立性。 二つの波が重なりあったとしても、それぞれの波の波形は変わらない。 変わらない ということは生き続けるということ。 減衰しない限り波は生き続ける。 生き続けるということは本当に良いことだ。 羨ましい事だ。 幸せなことだ。 生きている上に健康である ということは、きっと言葉では言い表せられない価値がある。 でも、人間は生きているのではない。 『生かされているのだ』 波も生きているのではない。 波は復元力のある媒質でしか生きられない。 つまり、 『波は媒質に生かされているのである』 もし、この宇宙に神様がいるのだと仮定するならば、僕たちを何かしらの媒質―つまり、心臓とか人生とか生態エネルギーだとか―によって生かされているのだ。
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