さよならの空

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「私ならもう、大丈夫だから」 彼女は微笑んでいった。 小さく柔らかい彼女の頬に触れ、その『最後』の感触を確かめた。 儚い。 儚すぎるよ、こんなの。 悔しくて悔しくて。 空の命を消し去ろうとする奴が僕は憎い。 そいつが目の前にいたら。 僕は両膝を付いてひれ伏し、頭を地につけ言うだろう。 それでも…… それなのに空は言うのだ。 「しょうがない、事だから」 何が、しょうがない、なのか僕には分からない。 分かるはずもない…… 空。 君がいない。 それは僕にとって僕の空がモノクロになったに等しい。 それでも…… それでもと…… 「歯磨き粉と洗濯洗剤は洗面台の下にあるからね」 「うん…」 「光熱費はもう払ってあるからね」 「うん…」 「フライトスーツ、ちゃんとアイロン、掛けておきました」 「うん…」 「ご飯、冷蔵庫にあるから。二三日は大丈…」 僕はさらにさらに強く、彼女を抱きしめた。 「大丈夫だよ。僕は大丈夫だから」 彼女の頬に誰かの涙が落ちる。 柔らかな尊い手が僕の涙滴を拭う。 まるで、誰かさんがそうしたように。
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