出逢いの空

4/13
前へ
/42ページ
次へ
諸星。 その名前を聞いてあまり良い気持ちにはならなかった。 「了解しました。失礼します」 僕はそう言うと、少し強引にその場を後にした。 それくらい。 僕は早く空の所に帰りたかった。 格納庫はひんやりとしていて、どこか焼けた燃料の匂いがした。 数ある機体の中から僕は自分の愛機をすぐに見つけた。 蜘蛛の巣が張り巡らされたようなペイントのとても目立つ機体だ。 機体に掛けられたラダーステップを登る時に、ふと機首に目をやるとそこには黄色い電気ネズミの絵がマーキングされている。 空が一番好きなゲームの一番好きなキャラクターだ。 僕は『ベイちゃん』と呼んでいる葉っぱのキャラクターが一番好きなのだけれど。 空が一番と言うなら、それは僕にとっても一番なんだ。 コックピットに持ち込まれた私物を次々に回収する。 これは整備員が小検査を行うにあたり、整備員の邪魔にならないようにするためだ。 コーヒー用のマグカップや音楽再生プレーヤー、ワンセグ。 そして忘れてはいけないのがこれ。 メインディスプレイの下側に挟んで固定された一枚の写真。 その写真をバッグの中に大切に僕はしまった。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加