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諸星。
その名前を聞いてあまり良い気持ちにはならなかった。
「了解しました。失礼します」
僕はそう言うと、少し強引にその場を後にした。
それくらい。
僕は早く空の所に帰りたかった。
格納庫はひんやりとしていて、どこか焼けた燃料の匂いがした。
数ある機体の中から僕は自分の愛機をすぐに見つけた。
蜘蛛の巣が張り巡らされたようなペイントのとても目立つ機体だ。
機体に掛けられたラダーステップを登る時に、ふと機首に目をやるとそこには黄色い電気ネズミの絵がマーキングされている。
空が一番好きなゲームの一番好きなキャラクターだ。
僕は『ベイちゃん』と呼んでいる葉っぱのキャラクターが一番好きなのだけれど。
空が一番と言うなら、それは僕にとっても一番なんだ。
コックピットに持ち込まれた私物を次々に回収する。
これは整備員が小検査を行うにあたり、整備員の邪魔にならないようにするためだ。
コーヒー用のマグカップや音楽再生プレーヤー、ワンセグ。
そして忘れてはいけないのがこれ。
メインディスプレイの下側に挟んで固定された一枚の写真。
その写真をバッグの中に大切に僕はしまった。
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