272人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
キラは深い眠りの中夢を見ていた
大きな城の中の庭の隅にある井戸で水を汲む少年がいた
その少年が人間だった800年前のキラで、母国の王家が暮らす城で下働きをしていた時の記憶だった
「ふう…」
水を汲み終え、キラは軽く伸びをする。
城で働くのは下級貴族が多く、プライドの高い者は真面目に働かず、キラ達の様に下町から出稼ぎに来ている者に重労働をさせるのだ
「さて、どう運ぼうかな…」
なみなみ水が入ったバケツ五個を見ながら溜め息をつく
どう見たって1人では運べない。
他の下働き仲間も仕事量が多くて手伝って貰う事は難しい
チチチチッ
「あ…」
キラが手を伸ばすと緑色の鳥が指にとまる
この鳥は人懐っこくキラが水を汲みにくると必ず近くに来てキラの何処かにとまる
「君はいつも何処から来るの?」
首を傾げる様に動かしている鳥に問い掛けながら軽くクチバシをつつく
「チチッ…」
「あっ…!」
高く飛び上がる鳥を思わずキラは追いかける
鳥は庭の真中の噴水辺りで何度か回りその場に降り立つ
「トリィ…どこに行っていたんだ?」
そこには1人の青年がいて鳥は周りを回って差し出された手に乗る。
鳥がトリィと言う名前が分かったと同時に青年を見たキラは少し驚いた
だが、あまりの綺麗な立ち振る舞いに見とれてしまい、視線に気付いた青年は振り返りキラを見た
「あ…///」
目が合い慌てて踵を返し元来た道を戻ろうと走り出す
すぐに、この場から離れないと…!
水を汲んであったバケツに手を伸ばし持ち上げると急いでいたためにバランスを崩し倒れてしまった
そして…
「わっ!」
持ち上げたバケツはキラに激突し水を頭からかぶる形となった
「つめた…」
濡れた体を気にしているとトリィがキラの元にまた来て、後から先程の青年も来た
びしょ濡れのキラに気付き慌てて駆寄って来た
「君、大丈夫!?」
最初のコメントを投稿しよう!