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「だっ…大丈夫です!」
後退りしながら、またバケツを持ってこの場から離れようと試みるも、一度ある事は二度ある
期待を裏切らずキラは普通バランスを崩してこけ、再び頭から水をかぶった
「………」
「………くすっ」
暫くの沈黙を破ったのは青年の方だった
キラが呆気なって青年を見ていると青年はお腹を抱えながら謝る
「ご…ごめん…でも…ちょ…っ」
そんなに笑わなくても…
どうしていいのか分からず、とりあえず立ち上がり今度こそこの場を離れる為に残ったバケツを手に持つ
「あ、まって!」
逃げたいのに手を掴まれて呼び止められキラは少し困った顔をして青年を見た
「そんな顔しないで。笑ってごめんね」
青年は羽織っていたマントを脱ぐとキラに羽織らせる
「あ…僕は大丈夫ですから!あの…コレは結構です!」
「ダメだよ。風邪引いてしまうよ」
マントを返そうとすると青年はキラの肩を掴んで再びかけ直す
「…でも王子にこんな事して頂ける身分ではありません…」
一応は城で働いている。王族の顔ぐらい把握はしていた。
だからこそ第一後継者である青年に優しくしてもらう資格など無い自分が、あろう事か自分のドジのせいで王子のマントを汚すなど、あってはならない事なのだ
「身分とかそんなの関係無いよ。…それに…」
王子はキラに顔を近付け頬にキスをする
「っ!?」
「よく、ここで水汲みしてるの見てたんだ…ずっと可愛いなって」
「っ…かわっ…///」
「君の事ずっと気になってた…でも声をなかなかかけられなくて…トリィのおかげで君と話が出来た」
王子はそう言うとキラの肩を引き寄せて歩き出す。
キラは少し引っ張られる様につれてかれる
「あ…あの…王子?」
「アレックス」
「え?」
「俺は王子が名前じゃ無いからね。ちゃんと名前で…アレックスと呼んで欲しいな」
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