月光透過、血臭

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月光透過、血臭

空気という概念は江戸時代には存在しなかったそうだ。 人々は酸素も二酸化炭素も知らないで、毎日毎日無意識に肺を動かしていた。 地球という概念は大航海時代までには存在しなかったそうだ。 人々は自分たちの足の下に人間が暮らしていることも、頭の上に宇宙があることも知らないで、毎日毎日前と後ろだけをみて歩いていた。 彼らには空気も地球も必要なかった。 そんなものがなくても朝はくるし、そんなものがなくても笑うことができた。 命という概念は、、、いつ生まれたのだろう。 ただ生まれ、ただ子孫を残し、ただ死んでいくことに、大袈裟な名前をつけたのは誰だろう。 混沌と流れていたものを区切り、せき止め、溢れさせたのは、誰だろう。 人間は、「命」を知った時から「人生」を生きなければならなくなった。 生まれることに喜びを、死んでいくことに悲しみを感じなければならなくなった。 そんなものがなくても、わたしは、 …わたしは?
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