暖かい手

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 ひとしきりユキと戯れた後、仁は満足そうな顔で立ち上がり自分の後ろに立っていた友也に驚き飛び上がる。 「……びっくりした…なんだ友也………ずっとそこに居たのか?」 「…………うん。」 思わず言葉につまってしまいかなりの間があってからそれだけ返事をすれば仁は心配そうな顔を見せた。 「大丈夫か?……気分悪かったりしないよな?」 落ち着いた低い声に微かに責める声が混じっていた。それは友也をではなく「もしかして具合が悪いのに自分が気付いてやれなかったのでは」と仁、自身を責めているようだった。自分を覗き込んでくる仁の瞳が心配だと訴えていた。 「……平気…なんともない……。」 友也は小さく微笑みそれだけを言えばすっと仁の大きな手が頬に伸びてくる。 (あ……。) 「………………。」 何も言わず顔を覗き込んでくる仁に友也の心臓は爆発寸前だった。至近距離で仁の顔が見え鋭い目に吸い込まれそうになり血液は濁流の如く速くなる。 「………仁…?」 おずおずと呼べば仁はやっと口を開いた。 「顔は赤いけど平気そうだな。目、泳いでないし…。」 顔が赤いのは己の性だと叫びそうになるのをなんとか飲み込み友也は小さく頷いた。
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