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仁の腕の中は暖かくて鼻腔を擽る香水にホッとして友也はゆっくりと目蓋を閉じる。
この腕が、この暖かい存在が自分だけのものになればいいと願う。自分だけのものになったらどれだけいいだろうと考え友也は強くしがみ付く。
自分を見て欲しい。自分だけを見つめてて欲しい。
そう願うのは我儘何だろうか……。
好きという気持ちを伝える事が出来ず今は友達として仁の傍に居る。
もし、好きだと伝えたら今の関係は壊れてしまうのではないかと友也を不安と恐怖が襲う。
それだけは嫌だ。
絶対に嫌だ。
もし今の存在がなくなってしまったら生きていけない。
暖かくがっちりとした仁の腕はそっと優しく友也を抱き締める。まるで親鳥が雛を守り包み込むように優しくて安堵感を覚えこのまま腕の中で眠ってしまいたくなる。
ずっと、ずっとこのままでいたいと望んでもそれは友也の我儘でしかなく仁を困らせるだけと分かっていた。
それでも友也はそっと抱き締めてくれる仁とがっちりとした暖かい腕を求めて止まない。
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