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空に桜の花弁が舞い散る季節。真っ青な空をひらひらと横切っていくピンクの花弁は蝶のようでまるで一緒に遊ぼうと囁きかけられているようなそんな気がした。
やっとの思いで美大を合格し、その入学式を終えホッとした結城友也はおもむろに空を見上げた。
太陽が眩しくて少し目蓋を落とせば眠たさにも似た感覚に襲われる。頬を撫でる風は優しく友也から自然と小さな笑みが零れる。
そんな時、急に締め付けられるような胸の痛みに襲われ思わずその場にしゃがみ込む。脈は早くなり息切れがして冷や汗まで出てくる「…ハッ……はぁっ………っ。」
苦しくて胸を押さえるが変わらず動く事も出来ずにいると不意に肩に何かが触れ視線だけを移す。
「大丈夫か?……さっきからずっと踞ってるから…。」「……っ…はぁっ……。」苦しくて返事が出来ずにいる友也に男は何も言わずそっと背中を擦ってくれた。「ゆっくり深呼吸してみろ…ゆっくりだ……。」
落ち着いた深い男の声は不思議と耳に心地よく友也は言われた通りゆっくりと深呼吸した。何度も優しくて擦ってくれる男のその手は大きくて温かかく何処か懐かしい気がした。
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