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武蔵の台詞を聞いて柚琉は「なんだよっそれー」と益々不機嫌になっていく。
柚琉を本当に怒らせたら恐いと知っている武蔵は思わず逃げるように走りだす。後ろから付いてくる足音と柚琉の声に全速力で走りだすが徒労に終わる。呆気なく追い付かれてしまい武蔵は肩を落とす。息の上がっている武蔵に対し柚琉は息一つあげず平静としていた。
「百メートル九秒フラットの俺をなめるなっ。」
むーっとあからさまにご機嫌斜めで武蔵はこれ以上、怒らせたらヤバイと頭の中で警報が鳴り響く。
「すんません、俺が悪かったです。」
そう言った瞬間、柚琉の顔つきが変わりパッと明るくなる。
「じゃあ苺牛乳でいいよ。」
「……はい、奢りますよ。俺も喉乾きました。」
嬉々とした声に武蔵は少し困ったように笑った。
(浮いたり沈んだり激しい人だ……。)
再び腕を絡めてくる柚琉に武蔵は申し訳なさそう言う。
「柚琉さん、頼みますから外では離して下さいね。」
変な所で気弱な武蔵は強く言えず柚琉を見下ろせば柚琉は嬉しそうに笑っていた。
「武蔵は照れ屋だな。」
「照れ屋とかそういうのではなくてですね……。」
困っている武蔵を見上げ柚琉はそっと腕を離す。
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