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 スーパーに来た仁と友也は直ぐ様、今日の夕食の材料を物色する。 カゴを持っている仁の隣を歩く友也はご機嫌だった。新婚という二文字が友也の頭の中を飛びかう。 仁と友也は並んで歩いていると兄弟のように見えた。 「友也、家に卵ってあるか?」 「……ないよ。卵はすぐ腐るから買わない。」 友也の台詞に「じゃぁマヨネーズはあるか?」と聞けば友也は少し考える素振りを見せた。 「分かんない。」 「じゃぁ一応、買ってくか。」 友也は嬉しそうに返事をすれば仁が小さく笑った。 悩む様子もなく次々と材料をカゴに入れて行く仁にふと小さな疑問が浮かんだ。 「ねぇ……リーダーって一人暮らし?」 一つ一つ手に取っては真剣に玉葱を選んでいる仁は友也の話を半分も聞いていない様子で「んー?」と生返事でちょっと淋しくなってしまった。 それでも真剣な眼差しを見せる仁の横顔に友也は目を奪われる。 凛々しく吊り上がった眉と微かに開いた唇から目が離せなくなった。 やっとお目に適った玉葱を見つけたのか嬉しそうな表情で振り返り手に待った玉葱を友也に見せてくる。
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