第一章:子狼、召喚される。

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  「このまま即実習と移りたい所だが、その前に復習しておこう」  隅枝先生はそう口にしながら生徒を見渡し始める。 きっと誰かを何かしら当てる気なのだろう。 他の生徒もその気配に察知し、ピタッと、まるで熊に遭遇した時の様に微動だにもしなくなった。  不意に隅枝先生の視線が止まる。視線の先にいるのはベルネの良く知る人物だった。  首筋まで伸びた濃い茶髪に、同じ色の瞳。 中性的な顔。背は160後半。 最近の悩みはベルネに身長で負けた事。 一言で表せば『愛すべき馬鹿』  ウォルフ・ランベルト 〈五行〉の〈土〉。 〈五常〉の〈信〉を司る名家。 ランベルト家の三男坊。ローテンブルク家とは古くからの付き合いで、ベルネとは幼なじみである。  ウォルフも隅枝先生の視線に気付いたのだろう。 刺激しない様にそろーっと顔を反らす。  しかし、それを逃すほど八不思議の女は甘くない。
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