第一章:子狼、召喚される。

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   カーグ魔術学園。  初等部から高等部まである、俗に言うエスカレーター式の魔術学校だ。  初等部では初歩的かつ、基本的な普通教育を。中等部では普通教育と、魔術の基礎知識を。高等部では専門魔術を選択し、専門分野に別れての技術の修得を目的としている。  しかし、高等部を出た段階では見習いの文字が取れただけの半人前で、その道で食べる為には、その上に設置されている専門院に入る必要がある。  さて、そんなカーグ魔術学園の高等部校舎の裏、放課後になったばかりの中庭を爆走する少女がいた。  170はあろうかという身長。 腰に届く艶やかな黒髪は風の抵抗でサラサラと後ろに靡き、翡翠の様に輝く目は吊り上がり、凛々しい表情は眉間のシワとへの字に曲がった口が、何処か仏頂面然としている。  ベルネ・ローテンブルク。 〈五行〉の〈木〉。 〈五常〉の〈仁〉を司る名家。  ローテンブルク家嫡女にして、次期当主。  今現在、医務室から姿を消した、自分が召喚した少年を捜している真っ最中である。
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