プロローグ

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 夜空は厚い雲に覆われているので、星の瞬きや月の輝きは見えない。  頬を撫でる風は冷たく総身が寒さで粟立つ。  静寂が満ちる美術館の周辺で、異様な空気が流れていた。  暗闇を照らすのは、右隣にいる少年が出した言霊の光の球。その目映い輝きが、ありえない生命体の存在を嫌でも認識させた。  背丈は十メートルといったところだろうか?  目はあるが耳はなく、口が弓なりに湾曲している。全身を覆うのはごつごつとした赤褐色の皮膚。衝撃を少し加えたとしても、びくともしない印象を受けた。  怪物が口から触手のようなものを出し身をくねらす。  もしあれを見た科学者がいたら、半狂乱になって喜んでいただろう。
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