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男は疲れていた。
息子が巣立ってからというもの、妻とは口を聞かなくなっていた。会社でも、空気のように誰とも馴れ合う事なく、家との往復生活を送っていた。
男は限界だった。
そんなある日、いつものように男は会社から定時で帰ると妻の姿が見当たらない事に気付く。
いつもなら夕飯の仕度をしているはずなのに。
と、スーツを脱ぎながら考えていると、台所の上に置き手紙があった。
"まさか"
男は動揺しながら内容を読む。
"友人と温泉旅行に行ってきます。帰りは明日になります。"
「それくらい直接話しとけよ。」
男はそう呟きつつ、強張った肩の力を抜いた。
"そうなっても仕方がない"
と考えてしまう自分が情けなく思えた。
冷蔵庫から残り物を出し、温めて食べる。
味がわからない。
そして、それに慣れてる自分がいた。
食事を終え、やることもなく寝室にむかった。
布団を敷き、電気を消して毛布を被る。
"明日もくだらない一日だろうな"
男はそんなことを思い、目を閉じた。
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