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「クスッ、クスクスッ」
笑うな
「クスクスッ」
「笑うな」
「クスクスッ、クスクスクスッ」
「笑うな!!!」
男は大声を出し飛び起きた。
「クスクスッ」
まだ聞こえる。
男は声のする方を見た。
するとそこには汚らしい鼠の姿があった。
「クスクスッ、クスクスッ」
確かに笑っているのは鼠のようだ。
男は独り言のように話し掛けた。
「何故笑うんだ。何が可笑しい。」
すると、鼠は男と目を合わせ答えた。
「笑うのに理由が必要かい。僕はいつもこうさ。」
男は質問に答えたことと、その答えに動揺して口ごもる。
鼠は続けて。
「あなただって笑うでしょ。笑うのに理由が必要なの。」
部屋の真ん中に堂々居座り、質問しかえすとはなかなか肝のすわった鼠だ。
男は鼠の質問に答えた。
「俺は笑えないんだ。だから笑える奴の意味がわからないんだ。」
「笑えないって誰かに止められてるの。どうして。」
鼠はしつこく言い寄って来る。
「笑い方を忘れたんだ。どこでどうやって笑えばいいか分からない。」
男は素直に答えた。
「クスクスッ、変なの。」
鼠は笑った。
「あぁ変だ。俺はおかしくなっちまったんだ。」
男は頭を掻きむしった。
今までたまったものを全部に鼠にぶつけた。
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