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「おまえにわかるか、辛いのに辛いと言えず家族の為に残業して、楽になってみたら何をすればいいかも分からず、誰にも打ち明けられず、笑うことも忘れてしまった、おまえにわかるか。」
「クスクスッ、クスクスッ、アハハハハハ」
鼠は笑い転げた。面白くって堪らないと、言わんばかりの大笑いだ。
「笑えよ、滑稽だろ。家も家族も手に入れて苦しむ贅沢馬鹿は。」
腹を抱えて笑ってた鼠がやっと落ち着き喋りだす。
「アハッ、アハッ・・・、フー面白いね。だって笑うのなんて簡単じゃん。」
「今の話し聞いてたか。」
男は怒り気味に鼠に言った。
「簡単だって。口の端を上に持ち上げるの。こうやって。ほら。」
男は言葉を失った。
そこには憎たらしい程の満面の笑みを浮かべたボサボサの毛をした鼠の姿があった。
男の悩みなんかを屁とも思わないであろうその笑顔に、男はさっきまでの怒りを吹き飛ばされてしまった。
しかし、その笑顔は今の男にとっては眩し過ぎた。
「お前もうどっか行けよ。」
男は鼠に言い放った。
「えっ、どうして。笑い方思い出したの。」
「寝るんだよ。明日も早いんだ。」
「・・・そうかい。わかった。んじゃ行くね。」
「もう二度と来るなよ。罠かけるからな。」
「罠は困るな、わかった。」
しぶしぶ鼠は言った。
「んじゃ最後にいい。」
「何だ。」
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