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冷たい雨が降りしきる夜の街。
外出してる人はほとんどいなく、騒いでいるのは激しい雨音だけであった。
そんな中を傘も差さず、白いジャケットを着た見た目15、6才ほどの少年が歩いていた。
髪は長く整った顔立ちなのだが、その表情は憂いで満ち、どこか影を感じさせるような少年である。
ザァーザァー・・・
不意に少年は、前からやってきた黒いコートとハットに身を包んだ見るからに怪しげな男に話しかけられる。
「君が・・・“帝国”の三代目かい?」
男は淡々した口調で少年に聞いてきた。
「帝国?三代目?一体なんのことだ?」
少年は男の顔を見ず、憂いなる表情をそのままに聞き返した。
「フフフ、別にとぼけなくたっていいさ・・・君は一年前、行方不明になったあの“ルパン少年”なんだろう?」
「だとしたら?」
ここでようやく男の顔を見る。
「クク、やはりな・・・やっと見つけた」と言い、男は右手で顔を覆いながら込み上げてくる嬉しさからか、不気味な笑みを我慢できずにいた。
一方、少年はというと瞬き一つせず、鋭い視線をその男に向けている。
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