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青年が礼をして口をつぐんだのを見て、隼人が急に真剣な目付きになる。
「でよ。本当なのか?"一切の記憶がない"って。
……………俺を脅す為だけの嘘だとは思えねぇけど」
隼人は他に話す事がないのか、何よりも気になっていたのか、単刀直入にそう言った。
それも仕方ないかもしれない。よくよく考えれば、全く記憶がないという人間相手になんて、迂闊に世間話すらできない。
「ああ、自分の名前すら覚えていない」
青年はそれだけ言った。
隼人は恐らく、確認したものの、その後を続ける言葉が見つからないのだろう。黙りこくってしまった。
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