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「おい、総司。無闇に人を切るんじゃねぇよ。また、俺や近藤さんが怒られるんだよ。」
そうやって言いながら出て来たのは仏頂面をした青年。
総司はそんな言葉に応えるようにニコニコと微笑んでいる。
「やだなぁー…土方さん。勝手に首が飛んでいっただけで僕は何もしていませんよ。」
そんなとんでもないことを笑顔一つも崩すことなく言う。その言葉を聞くとより一層眉間に皺を寄せ鬼の形相になる。おそらくは誰もが怯える表情ですら、総司は笑っているだけ。
土方と言われる先程から怒ってばかりの彼はとても端正な顔だちをしている。漆黒の腰まである髪を一つに束ね、仏頂面になる原因の切れ長の目も闇のように真っ黒で夜がとても似合う。土方も総司と一緒で誠と書かれた羽織を来ている。
そんな土方の後を着いて来ているのは土方と総司と同じ羽織を来ている十数人の男。
男達は白色に赤の文字でこちらも誠と書かれた旗を持っている。彼らは何かの組織のようだ。
武士たちは最早先程の迫力はなく唇をわなわなと震えさせて恐怖におののいている。
武士たちを見て町衆がざわざわと騒ぎ出し憐れみを含んだ表情をしている。
「は…ぁぁー…、助けて…」
武士たちのしたっぱだろう、恐怖で腰を抜かして命乞いをしている。
「た…助けて……助けて下さい…どうか、命だけは…」
土方はそんな彼らを冷たい瞳で見ると、ゆっくりと刀に手をかける。
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