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少女の溜まっていた涙は零れ出した。
母親を失ったことの悲しみか。総司の放った言葉にか。
――それとも、あの泣き笑いのような表情を見たからなのか。
ただ、単純に苦しくて悲しくて訳も分からずに泣き続けた。
総司の残した一言は本当に少女に言った言葉なんだろうか??
そのことを頭で考えながら。
江戸時代後期――。
沢山の腕のたつ浪人が集められて出きた幕府の護衛部隊。
それが新撰組。
そう、誰かが言っていた。
新撰組は哀しみを持つ人達の
集団だって。
そんな様子を見ていたのは二人の男女。
女は栗色の髪に白い肌、大きな赤い瞳を持つ美女。
ただ、誰かに似ている。
――そう、沖田総司に瓜二つなこの女。
男は。金髪の長い前髪を二つに分けて後ろ髪は襟足まで。
紫色の瞳に整った顔だちをしている。
女は憎しみの隠った目で
男は嬉しそうな目で
現場をずっと見ていた。
「みーつけた。凄く美味しそうに育ったんだね。」
男は舌舐めずりをして小動物を狙う狼のように総司を見ていた。
「お前も会えてよかったじゃないか。」
そうやって笑顔で女を見る。
女は男を横目で見て、そうねっと一言答える。
「……いつか迎えに行くよ。」
そんな意味深な一言を残して消えていった。
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